ツールドおきなわ 市民210km (Final)
とりあえず沖縄から帰ってきました。
荷物を片付けて夕方に会社行って少し仕事してから夜はお客さんと飯。 レースレポートを書かなければ。いつ書き終わるだろうか。とりあえず少しずつ書いて、書き足していこう。
(11/13 朝:ついにレースレポート書き終えました)
All photo: MakotoAYANO/cyclowired.jp
【ツールドおきなわ レースレポート】
一年に一番楽しみにしており、かつ重視しているレース。2006年から10年連続となる参加。
前夜の就寝は23時前。どうせ早くベッドに入っても眠れないだろうから自然体で。 緊張して熟睡とはいかず、けどいつものことなのでそんなに気にしない。
スタート3時間前の4:45に起床。 ホテルの部屋で朝食を食べる。
昨夜の夕飯を名護曲(なぐまがい)で食べてその際に朝食用にクァファジューシーのおにぎりも作ってもらった。 あと家から持ってきたオートミール・ミューズリーミックス、自然食系のパン、バナナなど多めに用意。 気分と体調によって何を食べるかとどのくらい食べるかを決める。
今回は前日までのカーボローディングがうまくいったからか、目覚めてあまりお腹空いていないので結果的に朝食はかなり少なかった。 まぁ当日朝にたくさん詰め込むよりは前日までに時間かけて身体に充填する方が正解だろう。
6時過ぎにホテルを出発してレース会場に。同じ市民210kmに出るチームメートのまこっちと合流。 着替えてイナーメアップオイルを脚に軽く塗るくらい。時間には余裕がある。
レース仕様。
市民210kmのゼッケンは400番台なので、一番若い番号をいただいた。
今までのレースでしなかったこととして、シートチューブのボトルケージにつけていた携帯用ポンプ台座を今回は外した。小さい事だけれど、 とにかく100%出来る準備は全てやってレースに臨むという意気込み。
スタート地点へ移動して今回もホイールを拝借したGOKISOさんのブースで空気を入れ直す。少し高めで前後共に8.5気圧。
予想最高気温は29度と高いのでスタート時点までダブルボトルには手をつけずにペットボトルの水をスタート直前まで飲む。
暑さ対策としてインナーウェアはなし。軽くもなるし。
今回のライバルとしては優勝2回の白石君、ショップを開業した岩島君、WALKRIDEの青木君、なるしまフレンドの小畑さん、あたりを考えていた。
あと練習で良い成果が出てきているチームメートのマコッチも一緒に表彰台乗れたら良いな、などと考えながらスタート。
7:47にスタート。スタート後は落ち着いて集団前方をキープ。今年はいつもにも増して前方をキープしていた気がする。これは落車だけは絶対に避けたいという気持ちの表れなのではないだろうか。
レース序盤の1時間くらいは本部半島の軽いアップダウンを走る。上り手前では先頭近くまで上がり、上りはマイペースで走って順位を下げながら脚を極力使わないように走る。そうやって上りをリラックスして走るようにしていたら本部半島はほとんどダンシングしないで走りきってしまった。
とにかく上りは軽い。これは調子が良いという事ではあるんだけど、一方で普段とは違った走りになっているので使う筋肉も違ってきたいたように思う。
本部半島を周ったら海外線を一路北上。毎年風が強いんだが今年は追い風基調。
展開的には先頭8名ほどの逃げが決まって差が徐々に開いていく。北上する海岸線に出てから差が2分台から少しずつ広がる。
例年の事なので1回目のダムの上りまでに3−4分差なら問題なくて、7kmほどの上りで先頭は人数を減らしつつ後続集団はペースを上げて1-2分の差を詰めて、、、という展開になると予想のもと、落ち着いて過ごす。
例年通りここらで皆に声かけて小休止/一時停戦を呼びかける。飲食しながら5.5時間も走るレースなんで。どこかで止まりたいなと思っていた選手はまとまってストップして、集団はしばらくペースを落として待ち、その後の山岳に向けてコンディションを整えるというのが通例。
チームメートやなじみの有力チームに声かけてから集団先頭に出て手を上げてアピールしてから路肩にストップ。
アレっ、、誰も止まらない。一人で追いかけるのは辛いなぁなんて思いつつ、軽量化。
焦る気持ちと後半に備えてコンディションをバッチリにしたい気持ちが交錯。データ見たら70秒ほど止まっていた。急いでコースに復帰して再出発。
けど平地をあのスピードで進む集団を一人で追うのってかなり厳しいぞ。これでレースから離脱したら笑い話にしかならないけど、実際数年前にディフェンディングチャンピオンとホビーの強豪タイムトライアリスとの二人がストップした後に、結局集団復帰できずというケースがあった。もしや、、、最悪のシナリオが脳裏をよぎる。
とにかく全く見えない300名以上の大集団を追って延々とタイムトライアルのごとく全力で走る。はい、序盤なのにかなり全力。
データ見たら2分の最高出力はこの時で400Wだった。心拍も173まで上がっている。
集団が40km/hで走っているとすると70秒だと750m以上前に行ってしまう。46km/hで追いかけたとしても6分で600mしか差が縮まらない。大集団の先頭から最後尾までは150mはあるだろうから、そのくらいの追走が必要になる。TTバイクでもないのに46km/h単独巡行ってかなり限界。
実際データで確認すると、4kmほどの追走を5分10秒くらい346Wでなんとか集団最後尾を捉えることに成功。集団が見えた時の安堵感ったら。
あわやレース終了かというハプニングを乗り越えて無事集団復帰したのがダムの上り口までまだ12km。集団先頭まで上がって息を整えるのにはまだ十分な距離があったのは救い。
cyclowiredさんのレースプレビューで優勝候補筆頭みたいに書いていただいて、皆からマークされていたであろうけど、それに対する攻撃がこういうことなのか?それともツールドフランスなどで強いけどプロトンからリスペクトされない選手っているけど、つまりはそういうことなのか?ただ単に皆が気づかなかっただけなのか?
複雑な気持ちが色々あったけど、とりあえず今日優勝するんだという強い気持ちに変わりないので、気持ちを落ち着かせて勝負に集中する。
一回目の普久川(フンガワ)ダムの上り。例年通り先頭付近で上りに突入する。例年通り上りに入りすぐから常に誰かがペースを上げて落ちない。
私は常にペースを上げる人の後ろにぴったりとついて2番手で上る。ここで勝負をかける必要はないけど、終盤に向けて足を削っていく為に速いペースで進むのは大歓迎。今日のコンディションで上りで遅れるということは有り得ない。
一回目のダムの上りはほとんどBeachのヒルクライマーっぽい選手が先頭固定で進む。こんな感じで常に先頭をマーク。
データ的には、約7kmで17分ほど290W、160/170拍、76回転。まだ余裕はある。
補給所で水を1本受け取る。補給所過ぎる頃には上りで少し遅れた選手たちも合流してきてまだまだ大集団。40名ほどか?
下り基調のアップダウンをこなして、少し長めの上りもこなしつつ、今度は西の海岸線へ出て南下。その海岸線でなるしまフレンドの奈良選手と倉林選手という強豪2名が抜け出して逃げる。40秒ほどまで広がったけど、1分の差であればダムの上り7kmで吸収できるので焦らない。
2回目の上りもアタックはほとんどかからずに落ち着いている。今度はVC福岡の井上選手が先頭固定で牽引。私は再びほぼ2番手固定。
上りの後半でWALKRIDEの青木選手がアタックして飛び出す。勢いは良かったけど10秒と差は開かない。ホビーレースの場合、切れ味良いアタックで飛び出すよりはなるべく力使わずにじわっと差を広げて逃げた方が良い。アタックの切れ味が良すぎると一緒に逃げに乗る人がいなくって、結局一人では逃げられず無駄に力を使って落ちてくるというのがよくあるパターン。そういう意味で青木選手のアタックもそのままゴールまで行っちゃうよというくらいの覚悟がないのであれば、あそこまで勢いよく行く必要はないんじゃないか。
ペース保ったまま徐々に差を縮めながら走り、山岳賞ポイント過ぎて下りで吸収。
補給所過ぎで岩島選手、田崎選手が二人で先行して。二人とも強豪だしここからが勝負区間なので、下り区間で数名で追いかける。安波小学校までの下りで最高82.2km/hを記録。そこで先頭二人に追いつく。6-8名くらい少し集団から抜けた感じか。
抜けたと言ってもせいぜい2-3秒差ですぐ集団は来るんだけど、平坦を一瞬走ってからすぐに勝負どころの上りが始まるので例え数秒でも下りで稼げるのは小さくない。後ろはその数秒を埋めるために休めないまま勝負どころに突入しなければいけないので。
そしていよいよ勝負が始まる安波小学校からの上りへ。
ところで、2回目の普久川ダムの前に右脚をつりかけた。最近はほとんど攣ることがなかったんだが、やっぱり暑さの影響なのか。給水と定期的にMag-Onジェルの摂取を心がける。
多分、レース用にExpresso15というペダルを使っているんだが、そのペダルはまだ使い込んでいないのでクリートと接触するプレートの状態が新しくって、それで練習用ペダルの多少削れたモノと微妙に感触が違って、それも普段と少し違う一因かなと走りながら考えた。
それはさて置き、勝負どころへ。
ほぼ毎年と言っていいほどこの上りでは人数を大きく減らす動きがある。今年も事前作戦通りこの高江の坂で仕掛ける。
数秒の差だと思うけど少人数で上り始め。気持ち岩島選手が強めに入ったと感じた。考えていることは一緒か。
まだまだ余裕はあるので自分のペースでさらにペースを上げる。2回目の普久川ダムで長く先頭走っていたVC福岡の井上選手が呼応してくる。けど先頭に出てペース上げるほどではない。どちらかという苦しそうな感じ。私はまだ余力は少しあるレベルで頂上までずっと落とさずに牽いてみる。
データでみると、レース中のピーク5分がここで353W。6分で337W。ってことはこの坂での勝負は5分程度だったみたい。
6人くらいいた気がするが、その後の緩い下り基調のアップダウンで人数が4人まで絞られる。
メンバーはWALKRIDE 青木選手、VC福岡 井上選手、シマノドリンキング 白石選手。
ゼッケン401、403、405、とJPTという実業団のプロカテゴリでも走っている青木選手なので順当に決まったという感じのメンバー。
奇襲でもなんでもなく勝負どころのペースアップで抜け出たメンバーなので、後ろの集団が強力に追走してくることはなくこれで決まるだろう。残り60kmくらいかな。集団との差はしばらく1分未満なのでまだまだ油断はできない。4人でローテーションを回す。
上りでは井上選手が強そうだけど、今日の私が上りで負けることはない。青木選手はパワフルそうだけど、上りでは重そう。ゴールまでのコースプロファイルを考慮すると途中で千切ることができるだろう。やはり私と同じく二度の優勝経験がある白石選手が強敵かな。白石選手は数年前に集団スプリントでも優勝しているし、井上選手は未知数なので、どこかで引き離して独走に持ち込みたい。スプリントでの勝負はしたくない。
4人で快調に逃げていたが、アクシデント発生。白石選手の前輪がパンク。
序盤であれば待つのだろうが、45秒程度の差で後ろも3人くらいで追走しているらしかったし、ゴールまでもう40kmを切っていたと思うので、残念ながら3人で逃げを続ける。ニュートラルバイクが止まって前輪交換していたが、それも手際良いとは言えずタイムロスは小さくないだろうな。
3人の逃げへと状況が変わる。相変わらず協調体制は取れており、均等に回る。
どこかの上りで青木選手が 遅れることは確定的なのでどこで千切るかな。まずは一人千切っておいて井上選手と1対1の勝負に持ち込もう。二人に協力されて2対1での勝負になったら不利だから。などと冷静に考えながら進む。
最後の補給所を過ぎて昔の源河への分かれ道を過ぎていよいよラスト30kmを切ってアップダウンのきつい区間へ。
最初の上りが一番キツイ。様子を見つつペースを落とさないように上る。井上選手も呼応するようにしっかりついてくる。やはり青木選手がきつそうで、ギリギリな感じだけど粘っている。ここはアタックせずにまず一人切り離して二人の勝負に持って行こうと思いじわじわと速いペースで上る。ついに青木選手が千切れる。
よし!と思いペースを維持していると井上選手も限界になり遅れてしまう。ここで勝負をかけるのもいいけど、後ろの二人が近いので、協調して追走されるとイヤだな。とは思ったけど、アタックして振り切ったわけではなく自分のペースで走れているので、このままイケル可能性も十分ある。
ラスト27kmくらいでついに独走態勢に入る。上りは良いんだけど、平地で内転筋が攣りそうになる。しかも平地からの上り返しが一番辛い。けど後続二人も強く追走できる脚は残っていないはずなので、大きくペースダウンしないようにとにかくギリギリで走り続けるしかない。集中してゴールまで走り抜くことを考える。
後続との差は40秒台で推移して1分以上にはなかなか広がらない。しかも審判バイクに聞いたら後続は二人と。風の強い海岸線も長いのでしんどいなぁと思いながらも上りでは少しアドバンテージがあるはずなので諦めずに進む。脚が攣ってストップしませんようにと祈りながら。今回の補給食のメインはMag−Onのジェル。効くはずだ。と信じる。
カヌチャベイリゾート手前の上りが正念場。ほとんど脚が攣った状態で這い上がるようにして上る。
その後の海岸線もヤバイ。けど断続的に続くアップダウンよりも長く続く上りだとリズムがつかめて走りやすいので、最後の羽地ダムの麓までたどり着けば勝てるだろうと思い頑張る。
練習時からやっていた空気抵抗を強く意識したフォームで頭を下げながら海岸線を行く。羽地ダムの麓で1分弱の差で最後の上りへ。
一人逃げは捕まったら勝負は終わるという不安と恐怖は有るけど、駆け引きなど余計に考えることはなく迷いなく走れるメリットがある。ただ14km先にあるゴールまで全力で走り続けることだけを考えて、上る。
超上付近で確か1分10秒差と聞いたので、これはイケると思った。けど実際は下って左折してからの平坦が辛かった。ずっと上っていたいと思うほど、上りはいいんだけど平地で脚が攣りそうになる。普通に走れば安全なタイム差があるので、脚が止まらないギリギリの線で走り続けて、無事逃げ切り。
ゴールラインが近づいてきて、コースサイドには観客がたくさんいる中を独走で走り抜ける10数秒間は、何度味わっても最高の瞬間。
だいぶ前からこのレースでまずは3勝、と思っていた。歴代トップの高山忠志さんの記録に並ぶことができた。
後続は二人でゴールまで来てスプリントで決着したらしく、2位青木選手、3位井上選手。
データ:
走行時間:5時間27分
走行距離:207km
出力:平均203W、最大588W(NP 247W)
心拍数:平均144拍、最大176拍
『落車とパンクだけはしないようにして自分の力を最後まで出し切れれば満足』という気持ちと、『勝つかどうかより格の違いを見せつけて勝ちたい』という表には出さなかった気持ちと両方持ったままスタートした一年で一番重要なイベントで、これ以上ない結果を残せて大変幸せ。
レース活動を黙認してくれている家族や休み中に仕事をカバーしてくれている同僚やイナーメ関係者、各種サプライヤーさんに感謝です。
(完)